蓄光材料について

1.蓄光顔料の技術開発の歴史

  • 夜光塗料の材料には、自発光タイプと蓄光タイプの顔料があり、自発光タイプは 20 世紀初頭から中盤位まで自発光物質である《ラジウム化合物》が時計の文字盤等に使われてきた。 
  • 1960 年頃になるとラジウム化合物に比べ、より安全かつ高輝度、低コストの《プロメチウム化合物》が開発され 20 世紀終盤まで使用された。しかし、自発光タイプの夜光塗料は、発光するための刺激物質に微量の放射線物質を使用しているため次第に敬遠されるようになり 20 世紀中にその殆どが姿を消した。 
  • 一方、蓄光タイプの顔料には《硫化亜鉛》という母体に銅を付活させたもの(ZnS:Cu)が従前からあったが、輝度や発光時間等性能は実用には到底いたらないレベルのものであった。 
  • 1990 年頃に開発された《アルミン酸ストロンチウム(SrAI2O4)》系の蓄光顔料により、発光性能や安全性など飛躍的な技術革新を遂げた。

2.アルミン酸ストロンチウム(SrAI2O4)系蓄光顔料の特徴

  • アルミン酸ストロンチウム系蓄光顔料は、太陽光や蛍光灯に含まれる A 領域付近の紫外線エネルギー(UVA)により刺激を受け、エネルギーを一時的に蓄え可視光に変換して徐々に光を放出させるもので、放射線物質は全く含有していない。

  • 励起に必要な光源は、A 領域紫外線(UVA)〜⻘紫色光(波⻑域:360nm〜450nm)である。B領域紫外線(UVB)および C 領域紫外線(UVC)は、一般的に有害な紫外線として、LED 照明ではカットされている領域である。

  • 発光時間や発光輝度は、硫化亜鉛系蓄光材に比べ 10〜20 倍と飛躍的に向上している。
  • 無機化合物であるため、水等に触れると加水分解し短時間で発光性能を喪失してしまうという欠点があった。

2.素材の種類と特徴

アルミン酸ストロンチウム系の蓄光顔料を使用した蓄光製品には様々な素材のものがあり、要求性能や用途に応じて選定する必要がある。

(1)プラスチック製シート(フィルム、板状)

塩化ビニル等に蓄光顔料を混ぜ込んだ素材。発光性能は JA〜JD(JIS Z 9096 に記載の発光性能区分)と幅広いグレードの製品がある。欠点としては耐摩耗性がないため、床や腰壁には使用不可。ガラス板を表面に張付け表面を保護したタイプのものがあるが、小口面から水が染み込み劣化した事例や割れが生じた事例があるため要注意。また、表面耐水の保護用ラミフィルムの劣化により耐水性がなくなるため、屋外での使用は要注意。

(2)せっ器質タイル

せっ器質の基材に蓄光顔料と釉薬を掛け、高温で焼成した素材。発光性能は JC〜JD。耐候性や耐水性等の耐久性は高く屋外でも使用可。欠点としては、釉薬や焼成の不均一性による同一面内輝度のバラツキが大きく、還元雰囲気下での焼成においても高温焼成により蓄光顔料が酸化し、最大輝度性能はシート製品よりも劣る。また、せっ器質タイルは衝撃により破損しやすいので要注意。過去、破損が多発しリコールになった製品もある。

(3)ホーロー板

ステンレス板の表面に蓄光顔料と釉薬を掛け、高温で焼成した素材。発光性能は JC〜JD。耐候性や耐水性等の耐久性は高く屋外でも使用可。欠点としては耐汚染性がなく汚れ易く、汚れが落ちにくい。また、ステンレスなどの鋼板に熱を加えながらホーロー掛けするため板が大きく反る傾向にある。リコールになった製品があり、現在、市場から姿を消している。

(4)高硬度石英成形板《アベイラス アルシオール》

石英石の砂状粉砕粒と蓄光顔料を少量のアクリル系樹脂(メタクリル酸メチル:通称 MMA)で高密度に成形した板状素材。発光性能は JD を大きく上回る。耐久性等について JIS Z 9096 の全ての評価項目に適合しており、屋内外の床壁全ての用途に使用可能。屋外や水回りでの使用用途に展開するため、蓄光顔料を⻑期間に渡って水分や湿気と遮断する技術開発を行い、視認性や発光性能、屋外での⻑期耐久性等を検証し、建設技術審査証明の交付を受けている。上記(1)〜(3)等の他素材よりも輝度性能が高く、かつ他素材の持つ欠点をすべてクリアしている。

2020 年現在、高硬度石英成形板は JIS Z 9096(床面に設置する蓄光式の安全標識及び誘導ライン)に完全適合する唯一無二の素材です。