耐久性について

1.蓄光材料の耐久性

ここでは、《アルミン酸ストロンチウム(SrAI2O4)》系の蓄光顔料を用いた蓄光材料について求められる耐久性の解説を行う。

アルミン酸ストロンチウム系の蓄光顔料単体は、焼成工程を経て作られる無機材料であるため、熱や紫外線による変質・劣化作用を受けにくい反面、湿気や水分により加水分解作用を受けやすいという弱点がある。また、蓄光顔料以外の樹脂や充填材、骨材、釉薬などの構成材料は、その種類により⻑所・短所が異なる。製品選定時にはそれらを踏まえ、蓄光材料の耐久性評価を行う必要がある。

現時点で蓄光材料の耐久性を規定した公的な規格・基準には「高輝度蓄光式誘導標識」認定基準と「JISZ 9096(床面に設置する蓄光式の安全標識及び誘導ライン)」の2つがある。

2.高輝度蓄光式誘導標識

2.1.認定基準

誘導標識の表示面は、表 1〜表 3 の左欄に掲げる誘導標識の区分に応じ、JIS Z 8716 に規定する常用光源蛍光ランプ D65を使用し、同表に掲げる各励起照度条件での平均輝度が、同表の中欄に掲げる値を有するものが、その区分の適合品となる。

表 1  励起照度 200 lx 時の表示面の平均輝度

励起光源 D65、20分照射終了20分後 D65、20分照射終了60分後

 

S200級 250 mcd/㎡以上 75 mcd/㎡以上
A200級 200 mcd/㎡以上 60 mcd/㎡以上
B200級 150 mcd/㎡以上 45 mcd/㎡以上
C200級 100 mcd/㎡以上 30 mcd/㎡以上

表2 励起照度100 lx時の表示面の平均輝度

励起光源 D65、20分照射終了20分後 D65、20分照射終了60分後

 

S100級 200 mcd/㎡以上 60 mcd/㎡以上
A100級 150 mcd/㎡以上 45 mcd/㎡以上
B100級 100 mcd/㎡以上 30 mcd/㎡以上
C100級

表3 励起照度50 lx時の表示面の平均輝度

励起光源 D65、20分照射終了20分後 D65、20分照射終了60分後

 

S50級 128 mcd/㎡以上 38 mcd/㎡以上
A50級 100 mcd/㎡以上

38 mcd/㎡以上

B50級

C50級

高輝度蓄光式誘導標識の認定基準の耐久性評価項目は表4の通り。

耐久性評価は目視による外観変化の度合いや強度、すべり抵抗性、発光色の他、各耐久性試験前後の輝度性能により行う。

また、設置場所の種類により試験項目を選択する。

表4 種類による試験項目

試験項目 屋 内 屋 外
床用 壁 用 床用 壁 用
1m未満 1m以上 1m未満 1m以上
耐磨耗性
耐水性
耐候性
耐燃性
耐薬品性
曲げ強度
すべり抵抗
耐凍結融解性
輝度
発光色
耐汚染性

※試験を実施する前(プレーンな状態)の輝度試験の他、耐摩耗試験、耐水性、耐候性、耐薬品(耐酸・耐アルカリ)性、耐凍結融解性、耐汚染性試験後に輝度試験を行い、各耐久性の確認を行う。

また、JIS Z 9096:2012(床面に設置する蓄光式の安全標識及び誘導ライン)の制定に伴い、耐薬品性の試験方法の変更及び耐汚染性試験が追加されており、その評価方法も統一化された。

上記全ての試験項目に合格し、その他必要事項の確認を含めて認定委員会が承認することをもって型式認定番号が登録され、認定証が発行される。

2.2. アベイラス アルシオール高輝度蓄光式避難誘導板の認定品

アベイラス アルシオール高輝度蓄光式避難誘導板は、型式記号AS-E08とAS-E24、AS-F24の3型式が消防避難設備の高輝度蓄光式誘導標識に認定・登録されている。

表5 アベイラス アルシオール認定品一覧

型式記号 認定番号 区分 種類
AS-E08 HP-001 B200級 屋内外の床壁兼用
AS-E24 HP-006 S200級、S100級、S50級 屋内外の床壁兼用
AS-F24 HP-020 S200級 屋内の床

3.JIS Z 9096(床面に設置する蓄光式の安全標識及び誘導ライン)

3.1.JIS Z 9097(津波避難誘導標識システム)

JIS Z 9097(津波避難誘導標識システム)では、耐久性については付属書Dで、JIS Z 9098(災害種別避難誘導標識システム)では付属書Hで、「JIS Z 9096(床面に設置する蓄光式の安全標識及び誘導ライン)2)に規定されている16項目(5.1りん光材料の昼間の色、5.2耐候性、5.3耐衝撃性、5.4耐水性、5.5耐燃性、5.6耐湿性、5.7耐ふ(拭)き取り性、5.8表面印刷の付着性、5.9りん光材料のりん光輝度、5.10粘着力、5.11耐摩耗性、5.12耐薬品性、5.13曲げ強度、5.14滑り抵抗、5.15耐凍結融解性、5.16耐汚染性)について要求性能の基準を規定している。

うち、5.2耐候性、5.4耐水性、5.6耐湿性、5.11耐摩耗性、5.12耐薬品性、5.15耐凍結融解性、5.16耐汚染性の項目については「5.9りん光材料のりん光輝度」の試験を実施する前(プレーンな状態)の輝度試験の他、各試験後の輝度試験を行い、要求される分類JA~JDまたは、JISZ 9097、JIS Z 9098のⅠ類、Ⅱ類の要求性能(表6、表7参照)に適合するか否かを確認するものとしている。

表6 最低りん光輝度

分類 最低りん光輝度
2分後 10分後 20分後 30分後 60分後
JA 210 50 24 15 7
JB 440 105 50 31  15
JC 880 210 100 62 30
JD 1760 420 200 124 60

励起光条件:常用光源蛍光ランプD65で200 lxで照射して励起時間20分

表7 JIS Z 9097、JIS Z 9098のりん光輝度

区分 励起停止後、720 分後のりん光輝度
I 類 3mcd/㎡以上 10mcd/㎡未満
II 類 10mcd/㎡以上

3.2.アベイラス アルシオール サインプレートの耐久性能

型式記号AS-E24及びAS-F24の2種がJIS Z 9097及びJIS Z 9098の附属書で規定する表7のⅡ類のりん光輝度を大きく上回る発光性能を有している。

JIS Z 9096で規定する16項目の耐久性能についても完全適合している。